2012年12月17日月曜日

病位論

漢方・中医学では、部位・深度と重傷度で病気の位置を捉えている
例えば、表と裏と言う概念がある。
表は体表部でより上部で背部の部位であり、同時に急性期の病気であることを意味する。
裏は体の内部、内側であり、慢性的な経過をたどっている病気と言える。
六経は傷寒論で用いられている病位論であり熱寒と組み合わせることで病の進行を簡易に理解しようとする省略形である。
十二経絡による分け方がもっと細かい。
厳密な分け方をすると、膀胱・肺は表証であり、肺経は呼吸器までの病気。膀胱経は肺経以外の急性疾患すべてであり、急激に進行して死に至る病までも含む。

心経
イライラ、のぼせ、手のほてり、不眠など情緒的な症状が主で肉体的な疾患がない段階。

心包経
心包とは心下にある袋、つまり胃を指し、精神的な症状が胃に影響を与えている段階である。


胆経
胆力という言葉がありますが、胆経の病とは、気力によって克服できる段階の症状、疾患と言える。
過敏性大腸炎や神経性膀胱炎など、もっと深い位置にあるように思われますが、その多くは胆経の病である。

胃経
これはもう気力だけでは乗り切ることのできない、明らかな胃腸疾患がみられる段階。
急性胃炎、感染性胃腸炎などは胃経から侵襲される病であり、
慢性的な、常に便秘、下痢といった状態も胃経として扱わなければならない。

小腸経
血液、汗、尿に関する病。

三焦経
焦とは、焦げるであり、炎症、化膿を意味する。

大腸経
全身機能のバランスが乱されている段階。

脾経
卑とは大事なものをしまっておく器のことで、人体にあてはめれば栄養状態のことで、
脾経の病とは(明らかに)瘰痩、肥満がみられる、またはそれによる疾患と言える。
最近言われるメタボリックシンドロームは、実は脾経の段階まで達している深刻な病である。

腎経
基本的な生命力が侵された段階。
内分泌、心臓、腎臓、生殖などに関わる病。

肝経
人体にとって最後の防衛戦。干は盾であり、国王みずからが盾を持って戦う段階となる。
ほとんど不可逆性の構造障害、起床不能、尿崩、便閉、常時出血など、
ほとんど死との戦いという段階であり、また長期的な血液症状ということで、女性の生理、生殖等に関わることは、肝経として扱うべきものが多い。


.
表裏
.
六経  熱証太陽病少陽病陽明病少陰病厥陰病
.
    寒証太陰病
.
三焦上焦中焦下焦
.
四要衛分気分営分血分
.
経絡膀胱経肺経心経心包経胆経胃経小腸経三焦経大腸経脾経腎経肝経

2012年12月10日月曜日

方剤の成り立ち〈基本方剤からの派生〉第2回

前回の方剤を薬味から見ていくと
麻杏甘石湯の構成生薬は甘草、石膏、麻黄、杏仁

それぞれの薬性・薬向は
甘草:平平潤平収
石膏:寒泻潤降散
麻黄:温泻燥中散
杏仁:温泻潤降散

主剤は石膏、麻黄であり、
方剤の薬性は主剤によって決まるので、
麻杏甘石湯は石膏の寒性、麻黄の泻性によって薬向が決定されている。


甘草:平平潤平収
石膏:泻潤降散
麻黄:温燥中散
杏仁:温泻潤降散
────────
麻杏甘石湯:寒泻

つまり麻杏甘石湯は石膏の寒性で熱をとり、麻黄の泻性で病邪を追い出す効果を持つ事になる。

続いて麻杏甘石湯の派生方剤である大青竜湯は、麻杏甘石湯に桂枝が加わった方剤である。生姜・大棗は麻黄・桂枝による傷陰を防ぐためであるので考えなくて良い。

麻杏甘石湯:寒泻
桂枝   :温補燥升
───────────
大青竜湯 寒泻(潤降)散

桂枝の発散作用により、解熱作用、祛風作用を強めた方剤である。

五虎湯は桑柏皮を加える事により、降性、つまり咳を鎮める働きを強めている。


麻杏甘石湯:寒泻
桑柏皮  :寒泻燥散  
───────────
五虎湯  :寒泻潤降散

越婢加朮湯は麻杏甘石湯に利水作用を持たせた方剤の一つである。


麻杏甘石湯:寒泻
蒼朮   :温泻升散 
ー杏仁  : ー潤
───────────
越婢加朮湯:寒泻燥降散

蒼朮により燥性を加えるとともに、潤性の強い杏仁は邪魔になるので加えない。

白虎湯は次のようになる。

甘草 :平平潤平収
石膏 :泻潤降散
知母 :寒潤降散
硬米 :涼補潤降散
───────────
白虎湯:寒補潤降散


※薬性、薬向(病性、病向)についてはこちらを参照されたい
漢方コラム

2012年12月4日火曜日

方剤の成り立ち〈基本方剤からの派生〉第1回

表証用方剤の基礎

今回は方剤の成り立ち方、どうして構成生薬が決まったかについて書いてみる。
まず表証用方剤(主に風邪症状に用いる方剤)についてまとめてみた。

                    ┌ーーーーーーーーーー大青竜湯
                    |(桂枝、生姜、大棗)
         ┌ーーーーーー温病湯ーーーーーーーーーー五虎湯
         │(麻黄、杏仁)   |(桑柏皮)
    ┌───┤          └湿ーーーーーーーーーー越婢加朮湯
    │(石膏)|           (蒼朮、生姜、大棗、ー杏仁)
    │    └ーーーーーー白虎湯
    │     (知母、硬米)   
───┤               ┌ーーーーーーーーーー葛根湯
(甘草)|               |(葛根、生姜、大棗、芍薬、ー杏仁) 
    |    ┌ーーーーーー麻黄湯升鬱ーーーーーーーーー神秘湯
    |    │(麻黄、杏仁)   |(厚朴、紫蘇葉、陳皮、柴胡、ー桂枝)
    |    |          └湿ーーーーーーーーーー小青竜湯
    |    |           (乾姜、細辛、五味子、半夏、芍薬、
    └───┤            ー杏仁)
     (桂枝)|          ┌ーーーーーーーーーー桂枝加葛根湯
         |          │(葛根)
         |          ├寒湿ーーーーーーーーー桂枝加朮附湯
         └ーーーーーー桂枝湯┤(蒼朮、附子)
          (芍薬、生姜、大棗)├ーーーーーーーーーー桂枝加厚朴杏仁湯
                    |(厚朴、杏仁)
                    └ーーーーーーーーーー桂枝加黄耆湯
                     (黄耆)
表証つまり急性・急迫症状であるので、それを緩和するために必ず甘草が入ります。
熱証であれば石膏、更に風邪症状に対する方剤ですから実証であれば麻黄、杏仁が入り、温病湯(麻杏甘石湯)となります。
熱実証の風邪症状、発熱・咳には麻杏甘石湯が基本方剤となります。
そして、収敵症状つまりは発熱、鼻づまりなどが顕著な場合は発散作用を強化するために桂枝を加え、桂枝麻黄の一方的な発表作用により陰液の消耗を来さないよう生姜・大棗を加えます。大青竜湯となるわけです。
升的症状、この場合は咳ですね。咳がひどいときは桑柏皮を加え咳を鎮める降性を強めます。五虎湯です。
湿症状、風邪なら鼻水など、あるいは関節痛、浮腫などがある場合は蒼朮を加え、湿性の強い杏仁を抜きます。越婢加朮湯となります。
虚証の場合は、知母、硬米、寒性の補薬を用います。白虎湯となります。
寒証の場合は桂枝が入ります。熱証の場合と同じように実証なら麻黄、杏仁を加え麻黄湯となります。
虚証ならば芍薬、生姜・大棗を加え桂枝湯となります。
それぞれ麻黄湯、桂枝湯を基本方剤として派生方を作っていくことが出来ます。



2012年11月12日月曜日

生薬の組み合わせによる効果と意義


漢方薬は複数の生薬(あるいは単一)の組み合わせにより構成される。
それは単なる生薬の総和と言うことではなく、組み合わせることにより、より強い効果、あるいは全く別の効果、または毒性の減弱など様々な変化を生み出す。
生薬の組み合わせによる特徴を知ることは、方剤の意味、効果を、言い換えれば証を知ることであり、新たな方剤を組む上での必須の知識となる。

組み合わせの例
甘草+石膏 表熱証
甘草+桂枝 表寒証
麻黄+杏仁 表実証 鎮咳平喘
麻黄+桂枝 表実証 発汗

ここで更に組み合わせてみると、
(甘草+石膏)+(麻黄+杏仁)=表熱実証の咳:麻杏甘石湯
(甘草+桂枝)+(麻黄+杏仁)=表寒実証の咳:麻黄湯

生姜+大棗 陰陽の調和

半夏+生姜 半夏の毒性減弱

黄芩+柴胡 胸脇苦満
黄芩+黄連 心下痞硬

竜骨+牡蛎 鎮静、収

芍薬+甘草 鎮痙

沢潟+茯苓、茯苓+猪苓 裏熱虚証の利湿
白朮+茯苓 裏虚証の利湿
白朮+蒼朮 温利湿、祛風
附子+白朮、附子+乾姜、附子+生姜 裏寒虚証の温利湿
甘草+乾姜 裏寒証、温肢冷
乾姜+人参 裏寒虚証、温補
半夏+人参、甘草+人参 裏虚証、補気

山薬+山茱萸 裏虚証、補気強壮

地黄+丹皮 裏虚証、理血

構成生薬が8種類程度の古方方剤であれば、それぞれの生薬の役割も理解しやすいが、構成生薬の多い大きな方剤となると分かりづらくなってくる。
よく使われる生薬の組み合わせを知っていれば、意外と簡単に整理でき理解しやすいか思う。
新たに方剤を組む際の方法は二通りある。一つは全くの更地に一つずつの生薬、あるいは生薬の組み合わせを積み上げていく方法。全く治療経験のない未知の症例にはこうするしかないだろう。
もうひとつは基本的な方剤、骨格となる方剤に加減を重ねていく方法である。
よく使われる生薬の組み合わせとともに、基本方剤とも言える、様々な方剤の原点になる方剤を知っていると漢方治療は非常に楽なものとなる。

2012年11月6日火曜日

薬物配合法則 第2回

相互作用の種類:七情

漢方方剤の配合法則は7種類に分類され七情と呼ばれている。
前述の相須、相使、相畏、相悪、相殺、相反に単一薬味の方剤(甘草湯、独参湯など)として用いる単行の7つである。
精神的ストレスをあらわす内傷七情と関連はない。

相須
 麻黄+杏仁、知母+石膏、知母+黄柏、陳皮+紫蘇、麦冬+天冬、黄芩+黄連、
 竜骨+牡蛎、肉桂+人参、炙草+人参、茯苓+白朮、山薬+白朮、地黄+丹皮

相使
 厚朴は麻黄、貝母の作用を強める
 川芎は辛夷、当帰の作用を強める
 黄芩は柴胡、大黄の作用を強める
 竜骨は黄芩、黄連の作用を強める
 防風は白朮、蒼朮の作用を強める
 茯苓は黄耆、人参の作用を強める
 地黄は麦冬、天冬の作用を強める
 枸杞は菊花、花粉の作用を強める

相殺

相畏
 半夏は生姜を畏れる
 当帰は生姜を畏れる
 竜骨は石膏を畏れる
 防風は乾姜を畏れる
 細辛は滑石を畏れる
 黄耆は防風を畏れる
 黄芩は丹皮を畏れる
 阿膠は大黄を畏れる
 貝母は秦艽を畏れる
 茯苓は秦艽を畏れる
 桔梗は竜胆を畏れる
 黄連は牛膝を畏れる
 沙参は防已を畏れる
 花粉は牛膝を畏れる
 辛夷は石膏、黄耆を畏れる
 川芎は滑石、黄連を畏れる
 麻仁は茯苓、牡蛎を畏れる
 巴豆は大黄、黄連を畏れる
 丹皮は貝母、菟絲、大黄を畏れる
 附子は防風、緑豆、黄耆、人参、犀角、甘草を畏れる

相悪
 黄芩と生姜、黄芩と杏仁
 黄連と生姜、黄連と菊花
 黄耆と細辛、黄耆と川芎、黄耆と杏仁、杏仁と葛根
 山萸と細辛、山萸と川芎、山萸と桔梗、山萸と防已
 牡蛎と麻黄、牡蛎と辛夷、牡蛎と呉萸
 貝母と地黄
 細辛と防已
 厚朴と沢潟

相反
 甘草は大戟、芫花、甘遂、海藻にそむき、
 烏頭は貝母、瓜蔞、半夏、白斂、白芨にそむき、
 藜藪は人参、丹参、沙参、苦参、玄参、巴参、党参、細辛、芍薬にそむく

  *引用:証と方剤学体系 玉城博任著



 

2012年10月28日日曜日

薬物配合法則 第1回


構成生薬数が少ないほど切れ味は増す

漢方薬は1~十数種類程の生薬の組み合わせで出来ている。
難しい症例の場合、どうしても構成生薬が増えてしまうし、
特にエキス剤の場合は入っている生薬を抜くことは出来ないので、合剤という形で、
どんどん構成生薬が増えてしまう。
単純に考えると、構成生薬が多ければ多いほど、いろいろな症状に効果が出て良いように思えるかもしれない。
しかしこれは大きな間違いである。
構成生薬が増えれば増えるほど、証が複雑になり、効果が出る人は少なくなってくる(※今回は触れないが、複雑な複数の疾患がある場合は治療優先順位に従わなければならない)。
簡単にあらわせば下図のとおりである。
引用:証と方剤学体系 玉城博任著

A剤とB剤を合わせると、AとBの対症となる証を持ちつつ、A剤とB剤の共通の適応症状にしか効果がないと言うことである。
処方が大きくなるほど、治療対症は狭くなっていく。
日本では、古い処方のエキス剤が主流で用いられている。限られた処方数で、治療対症も限られている。そのために合剤を用いるケースが多い。ときの4種類、5種類と使われているのを見かける。はっきり言って効くわけもなく、実際効いてもいない。
効かないからこういうことになってしまったのであろうが・・・


漢方薬は生薬の相互作用を利用している


漢方薬は複数の生薬の組み合わせで出来ている。これは単純な足し算ではない。
西洋薬にも相互作用はあるが、多くは不利益な作用であり、意図的に利用しようとすることは希である。
漢方では相互作用を利用することで、より有効な効果を発現させている。また相互作用の組み合わせを利用することで、方剤を形成させているとも言える。
例えば麻黄+杏仁は実証の咳、喘息に、それぞれ単独で用いるより相乗的に効果的である。
寒証であれば桂枝を、熱証であれば石膏を加え急迫症状を和らげる甘草とあわせて、
それぞれ麻黄湯、麻杏甘石湯となる。

相互作用の種類

相須:同じ性質の生薬を組み合わせることで作用を増強させる
相使:違う性質の生薬を組み合わせることで一方の生薬の効果を増大させる(使薬の働き)。
相殺:ある生薬が他の生薬の中毒反応を除去する。相畏の軽いもの。
相畏:ある生薬が一方の生薬の有害成分を減少抑制することによって有害作用が起こらないようにする。
相悪:2種類の生薬が一緒になることによって両方とも効果がなくなること。
相反:2種類の生薬が一緒になることで、はげしい副作用や毒性が出ること。

つづく




2012年10月2日火曜日

当帰に関する考察

当帰の主な作用

1.補血

 いわゆる補血・活血の効能である血を量的、質的に補うことであり、単に貧血を治すという意味とは異なる。数値化しやすい量的な異常に注目する傾向の強い西洋医学とは異なり、質的な異常重点に置くのが漢方、中医学の特徴とも言える。
  
 病態側から見れば血虚を改善すると言うことである。当帰のみでも効果はあるが、地黄、芍薬、特に芍薬との併用で補血の効果を十分に発揮させることが出来る。
  
 血虚の主な症状は、顔色が悪い・皮膚につやがない・口唇があれる・爪がもろい・目がかすむ・目が乾く・目がくらむ・頭がぼーっとする・ふらつく・動悸・四肢のしびれ感・筋肉の引きつり、けいれんなどである。また、舌質は淡白・脈は細などの徴候を示す。

2.調経

 月経の調整作用である。ただし月経不順になる要素はいくつもあり、それが絡み合って起きているのが普通である。当帰の働きは基礎的な部分での作用と言える。

3.活血止痛

 疼痛は血瘀と気滞が関係する。
うっ血、出血、打撲など瘀血を除くことで軽減する痛みである。
もうひとつ、散寒止痛による効果がある。寒冷や飲食物による冷えで起きる痛みに対する効果である。

4.潤腸通便

 当帰の持つ重要な作用のひとつである。
かなり漢方に通じた専門家でも多少なり西洋医学を学んでしまっている人は安易に瀉下通便に走ってしまうことが多い。
明らかに寒虚証であるのに大黄、芒硝を使ってしまう。
大黄が用いられない便秘、すなわち血虚による腸燥便秘である。当帰は腸内を潤して排便させやすくする。滋潤・栄養により腸を元気にさせる効果である。長年の瀉下剤使用により疲弊した腸を回復させるにも有用である。

副作用について

ツムラの添付文書によると
主な副作用として、発疹、かゆみ、体がだるい、食欲不振、胃部不快感、悪心、嘔吐、腹痛、下痢・・・とある。
発疹等に関してはすべての処方に書かれている事で、特異な例として良いと思う。
問題は胃腸症状である。
基本的に当帰は脾陽虚・脾気虚には用いない。症状を悪化させるからである。
上記の副作用症状はすべて脾虚の症状である。簡単に言ってしまえば誤治である。
もうひとつ問題としてはエキス剤の問題である。エキス剤に用いる当帰は、そのまま乾燥しただけの修治をしていない当帰である。酒炙・酒洗の修治をしていれば起きない問題でもある。

あるサイトに当帰の副作用、注意点として次のように書かれていた。
1,長期間あるいは多量に使用すると、咽喉痛・鼻孔の灼熱感などの症状があらわれることがあります。
2,活血の効能が強いので、性器出血過多には使用しない方がよいです。
ひとつめは傷陰である。何も考えずに辛温剤を長期間使ったことによって起きた明らかな誤治。
二つ目は、もともと心肝火旺。陰虚陽亢に用いたために起こった誤治。

漢方の勉強をしても、生薬・薬味の知識がないものが多すぎる。本来は副作用ではなく使い方が間違っているのに、副作用にされて本来必要な人に敬遠されるようなことがあってはきわめて残念なことだ。
漢方は、基礎理論→生薬学→方剤学の順にマスターすることが重要である。
日本では一部の方剤から憶え始めてしまうので間違いが生じやすいのではないかとも思う。

代表的な方剤に用いる当帰の修治方

防風通聖散
 熱実証の通便に用いるのだから、そのままの生当帰で構わない

五積散
 止痛が目的であり寒湿困脾の状態にある場合もありうるので酒炙当帰を用いる

四物湯
 エキス剤で胃腸障害を一番起こしやすい処方であろう
 補血目的なので酒洗当帰が通常である。便通がつきすぎるようなら酒炙当帰を用いる

補中益気湯
 脾虚で便秘のはずもないので酒炙当帰を用いる

芎帰膠艾湯
 止血目的であれば炭当帰もあり得る。補血が主目的であれば酒洗当帰

温清飲
 生当帰で構わない

抑肝散
 本来は当帰ではなく芍薬で良かったのではないかと思える。
 食欲不振がなく便秘するなら生当帰でも良い
 胃腸に不安があって便秘するなら酒洗当帰、便秘がないなら酒炙当帰

当帰芍薬散
 便秘するなら酒洗当帰、そうでなければ酒炙当帰

当帰健中湯
 酒洗当帰を用いる

加味帰脾湯
 酒洗当帰が基本となる






2012年7月23日月曜日

蒼朮と白朮について

蒼朮と白朮の使い分けに関して

日本のエキス剤において、蒼朮と白朮の使われ方には常に疑問を感じていた。
もともと私自身の使い方は、表証や、より利湿を求める際には蒼朮、利水とともに補性
、健脾が必要な場合には白朮としている。五積散、桂枝加朮附湯、越婢加朮湯、薏苡仁湯など顕著な痛み症状が主目標である場合は蒼朮。六君子湯などの人参湯からの派生方剤、当帰芍薬散などは白朮である。
この蒼朮と白朮の使い分けについては、鹿児島の厚仁堂薬局 前村勉先生の著書「修治入門」に明解に記載されている。

運脾の蒼朮と健脾の白朮

その燥湿作用だけを取ってみると蒼朮の方が白朮に勝っているが脾胃への補性は蒼朮にはなく、一方の白朮はこれが優れている。
例えば食後すぐにもたれる、腹が張る、軟便をもよおすなどの症状(脾胃湿濁)がある場合で、お腹がすかずただ時間になったから食事をするタイプと、十分お腹がすいて食欲をもって食事をするタイプに分け、前者には白朮、後者には蒼朮を用いるようにしている。よって、補中益気湯、六君子湯、人参湯などは白朮、平胃散・茯苓飲は蒼朮と言うことになる。次に発汗(解表・通痺)と止汗。感冒や四肢の痛みに用いる場合、五積散・桂枝加朮附湯・疎経活血湯・越婢加朮湯・苓姜朮甘湯は蒼朮を、自汗が顕著で止汗目的で防已黄耆湯を用いる場合には白朮を用いるようにしている。そして更に特殊な例として、優れた白朮の安胎作用を考慮し当帰芍薬散は蒼朮ではなく白朮配合のものを用いている。
(「修治入門」前村勉著より)

誤った使われ方と正しい使い分け

処方によっては必ず白朮を、あるいは蒼朮を用いなければならない。そうしなければその処方自体の存在理由がなくなってしまう。補中益気湯や六君子湯は白朮でなければ処方自体の使用目的が不明瞭になってしまう。
五苓散や苓桂朮甘湯などはその時の目的によって白朮・蒼朮を使い分けるべきであろう。
いずれにしても、当然のことながら漢方薬を使いこなすには、例えそれがエキス剤だけだったとしても、正しい生薬の知識を持たなければ不可能なことだ。
一部のエキス剤で明らかに誤った生薬が使われている例はいくつもある。何故そんなことが起きたかはまた別の機会で述べたい。
ひとつ言えることは正しい漢方薬の使い方が周知されていけば、いずれ誤った使い方、誤った処方は淘汰されていくだろう。

2012年7月22日日曜日

生薬の修治2


黄芩
     修治方:酒炙
               黄芩500gに紹興酒100mlをムラなく霧吹きで噴霧する。ラップで包み1時間
      ほど放置し、酒を十分にしみこませる。
               中華鍋などの鉄製鍋にいれ弱火でから煎りする。完全に乾燥させる。
     目的 :清肺・清肝作用の増強

     修治方:炭
               黄芩を弱火で表面が炭化し内部も黒褐色になるまで乾煎りする。
     目的 :止血作用の増強
黄柏
     修治方:塩炙
               黄柏500gに、天然塩10gを水50mlで溶かしムラなく吹き付ける。
               ラップで包み1時間ほど放置。
               鉄鍋に取り弱火で乾煎りする。中まで乾燥すれば完成である。
     目的 :帰経の腎への集中

     修治方:炭
               黄柏を弱火で表面が炭化し内部も黒褐色になるまで乾煎りする
     目的 :止血作用の増強         
     
甘草
     修治方:清炒
               甘草を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :補気作用の増強

     修治方:蜜炙
               蜂蜜100mlを中華鍋にとり、水50mlを加え攪拌しながらゆっくり加熱
               していく。
               全体的に泡だったところへ甘草500gをいれ、素早くかき混ぜる。このとき
               竹または木製のへらを用いた方が良い。
               弱火で攪拌しながら炒めきつね色になりべたつきがなくなれば、完成である。
     目的 :補気・潤燥作用、止痛作用の増強、浮腫などの副作用減弱

桔梗
     修治方:清炒
               桔梗を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :温性・燥性の増強

厚朴
     修治方:姜炙
               厚朴500gに生姜のおろし汁50mlをムラなく噴霧する。ラップで包み1時間
               ほど放置し十分にしみこませる。
               中華鍋などの鉄製鍋にいれ弱火でから煎りする。完全に乾燥したら完成であ
               る。
     目的 :脾胃への効果の集中

地黄
     別記

芍薬
     修治方:清炒
               芍薬を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :緩急作用の増強、寒性の減弱

川芎
     修治方:酒炙
               川芎500gに紹興酒50mlをムラなく霧吹きで噴霧する。ラップで包み1時間
      ほど放置し、酒を十分にしみこませる。
               中華鍋などの鉄製鍋にいれ弱火でから煎りする。内部まで乾燥し黄褐色に
               なったら完成である。
     目的 :活血作用の増強

知母
     修治方:清炒
               知母適量を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :滋陰作用の強化

     修治方:塩炙
               知母500gに、天然塩10gを水50mlで溶かしムラなく吹き付ける。
               ラップで包み1時間ほど放置。
               鉄鍋に取り弱火で乾煎りする。中まで乾燥すれば完成である。
     目的 :帰経の腎への集中、滋陰作用の強化

当帰
     修治方:酒洗
               当帰500gに紹興酒100mlをムラなく霧吹きで噴霧する。ラップで包み
              1時間ほど放置し、酒を十分にしみこませる。
               日陰で完全に乾燥させる。
     目的 :補血作用の増強
      
     修治方:酒炙
               当帰500gに紹興酒100mlをムラなく霧吹きで噴霧する。ラップで包み
              1時間ほど放置し、酒を十分にしみこませる。         
               鉄鍋に取り、弱火で乾煎りする。内部が乾燥し深黄色になったら完成である。
     目的 :活血作用の増強

     修治方:炭
               当帰を弱火で表面が炭化し内部も深褐色になるまで乾煎りする
     目的 :止血作用の増強

杜仲
     修治方:塩炙
               杜仲500gに、天然塩15gを水50mlで溶かしムラなく吹き付ける。
               ラップで包み1時間ほど放置。
               鉄鍋に取り弱火で乾煎りする。表面に焦げ目がつきちぎっても糸を引かなく
               なれば完成である。
     目的 :補腎作用の増強

白朮
     修治方:清炒
               白朮を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :健脾作用の増強

牡蛎
     修治方:煅
               牡蛎適量を灰白色になるまで30〜60分オーブンで加熱する。
               爪で割れるぐらいの脆さになっていれば良い。
     目的 :固渋・制酸作用の増強

益知仁
     修治方:塩炙
               益知仁500gに、天然塩10gを水50mlで溶かしムラなく吹き付ける。
              ラップで包み1時間ほど放置。
               鉄鍋に取り弱火で乾煎りする。完全に水分が蒸発し、微黒褐色になったら
               完成である。
    目的 :固摂作用の増強

薏苡仁
     修治方:清炒
               薏苡仁適量を中華鍋に取り、弱火で淡黄褐色になるまで炒める。
     目的 :健脾止瀉作用の増強

竜骨
     修治方:煅
               竜骨適量を灰白色になるまで90〜120分オーブンで加熱する。
     目的 :固渋作用の強化




治病求本

2012年7月16日月曜日

生薬の修治


漢方薬は生薬を煮出して煎じ薬としたり、磨りつぶして粉薬として服用します。
この漢方薬に用いる生薬は単にすべて採取してきた物をそのまま乾燥して
刻んだり磨りつぶせば良いわけではありません。
生薬を漢方薬として用いられるように処理・加工することを修治と言います。
その方法は生薬ごとに幾通りもの方法があります。
あまり一般的に説明されることのない話ですが、すでに生薬問屋で周知されて
販売されているものもあれば、
必要な修治がされずに忘れられてしまっているようなものもあります。
修治の目的を大きく二つに分けると以下のようになります。
1,そのままでは毒性や刺激性などがあり、それを除くためになされる場合。
     附子など
2,そのままで用いるよりも効果を増すため、あるいは別効果を引き出すためになされる場合。
     芍薬など
1に関しては基本的に周知されてから販売されているので、
今回はおもに2の場合を中心に生薬ごとに書き進めたいと思います。
威霊仙
     修治方:酒炙
               威霊仙500gの乾燥品に紹興酒約50mlを吹きかけ、
 ラップで包み1時間ほど放置し中まで湿潤させる。
               中華鍋などの鉄鍋を用い、弱火でよく乾燥するまでから煎りする。
     目的 :祛風止痛作用の増強

延胡索
     修治方:酢炙
               延胡索500gに食用酢100mlを霧吹きなどで吹きかけ、
               ラップでくるみ密閉し、1時間ほど放置し仲間で湿潤させる。
               その後、鍋に取り弱火で酢のにおいがなくなり、
               飴色になるまで炒める。
     目的 :止痛作用の増強

黄耆
     修治方:清炒
               黄耆を中華鍋に取り、弱火で黄褐色になるまで炒める。
     目的 :補気作用の増強

     修治方:蜜炙
               蜂蜜100mlを中華鍋にとり、水50mlを加え攪拌しながらゆっくり
               加熱していく。
               全体的に泡だったところへ黄耆500gをいれ、素早くかき混ぜる。
               このとき竹または木製のへらを用いた方が良い。
               弱火で攪拌しながら炒めきつね色になりべたつきがなくなれば、完成である。
     目的 :補気・潤燥作用の増強


治病求本

2012年6月17日日曜日

ぜんそくの漢方薬(その3)

エキス剤による喘息治療

喘息が発症は主に腎に起因する。
腎陰虚のために小児期から喘息を発症することが多い。

六味丸半夏厚朴湯 


エキス剤での対応の基本となる。
この場合いうまでもなく熱虚証を示している。

脾虚を伴ってくる状態になると、陽気不足から寒証をしめし、食欲不振や軟便傾向、薄い痰などの特徴が見られる。

六君子湯半夏厚朴湯


※小柴胡湯からの派生方剤を安易に用いるべきではない。
婦女子の多くは肝熱があり清熱剤に反応しやすい。それも虚熱がほとんどであるので、
実熱を冷ます黄芩、柴胡は不適である。

発作時や症状軽減に用いる処方。




桂枝厚朴杏仁湯


その他の喘息に用いられる方剤

冷哮丸(れいこうがん)
麻黄・川烏頭・細辛・蜀椒・明礬・皂角・半夏麴・胆南星・杏仁・生甘草・紫菀・款冬花

三子養親湯(さんしようしんとう)
紫蘇子・白芥子・蘿蔔子

麦味地黄丸(ばくみじおうがん)
麦門冬・牡丹皮・茯苓・沢瀉・五味子・熟地黄・山茱萸・山薬
     =八仙長寿丸

射干麻黄湯(やかんまおうとう)
麻黄・生姜・五味子・射干・細辛・紫苑・款冬花・大棗

定喘湯(ていぜんとう)
竹葉・甘草・石膏・粳米・麦門冬・半夏・人参・蘇子・桑白皮・地骨皮

蘇子降気湯(そしこうきとう)
半夏・蘇子・当帰・前胡・厚朴・桂枝・陳皮・乾生姜・大棗・甘草

至宝丹(しほうたん)
犀角・玳瑁・琥珀・朱砂・雄黄・竜脳・麝香・牛黄・安息香・金箔・銀箔

黒錫丹(こくしゃくたん)
黒錫・硫黄・沈香・木香・小茴香・陽起石・胡芦巴・補骨脂・肉豆蔲・川楝子・附子・肉桂

宣白承気湯(せんぱくじょうきとう)
石膏・大黄・杏仁・栝楼皮

三拗湯(さんようとう)
麻黄・杏仁・甘草・生姜

華蓋散(かがいさん)
茯苓・麻黄・杏仁・橘皮・桑白皮・生姜・甘草・蘇葉

瀉白散(しゃはくさん)
桑白皮・地骨皮・粳米・甘草・乾姜

2012年6月10日日曜日

ぜんそくの漢方薬その2

喘息の治療例

22才 男性 身長177cm 体重66kg
最近になって以前よりも喘息の発作(ヒューヒューといった音が出る)多分軽い発作が良く起きるようになって困る。特に朝が多いです。

1.大食できる
2.どちらかというと冷たい飲み物を好む
3.便はすっきり出る
4.尿量は普通
5.寝覚め良い
6.血圧普通
7.汗が多い

1,2より熱証と考えられる。
熱証で汗が多いのに便秘ではないため虚証と判断し、
熱虚証として治法を考える。

今回はネットからの相談である。
短い文面、情報から判断しなければならない。
22才で軽い発作と表現している。おそらく小児の頃から続いていた喘息がまた少し出ているのだろう。
身長体重からも健全に成長はしている。脾虚とみる要素はない。

喘息の本質である腎を強化しながら症状を和らげてあげれば快方へ向かうはずである。

処方
柴胡5半夏4厚朴3生姜2大棗4甘草2
人参3茯苓4蘇葉2山茱萸4熟地黄5
山薬6白朮4

補腎とともに三焦の気の流れを整えてあげれば良い。
2ヶ月ほどで改善。





2012年6月5日火曜日

ぜんそくの漢方薬(その1)

喘息に関する中医学的解説

ぜんそくのメカニズム

肺は気を主り、腎は気を納める
人間の呼吸は肺と腎の強調作用により成立しています。
特に腎の働きは重要です(腎主納気)。
呼吸により肺に入った空気を肺気と呼び、肺気は五臓六腑に清気を送りながら下降し腎に収納されます(肺の粛降作用)。
腎に納められた肺気は、先天の精・命門の火、すなわち生命のエネルギーの源となります。
肺気はもともと軽くふわふわしたものであり、
腎が虚すと、十分に納気出来なかった肺気が上昇してしまい、下降してきた肺気とぶつかり合い、気の乱れ、滞り、呼吸の障害が起こります。
これが喘息の発症メカニズムです。

また五行の関係より、土生金、すなわち肺の健全性を保つには脾が健全が前提となります。
喘息が慢性化して行くには脾の健康が関わってくるということです。脾は肺の親であり、親が弱っていれば子供も健康ではいられません。
そして脾は生痰の器であり脾虚は痰を生成し喘息を悪化させていきます。
胃腸虚弱者の喘息ほど治りにくくなります。
肺・脾・腎の関係が喘息の発症、そして治療の鍵となります。
喘息の治療は脾と腎の健全性をいかに保つか、それが本質になります。


小児喘息は腎陰虚。
小児期に完治せず成人型の喘息になった場合は脾虚を伴います。




2012年5月20日日曜日

防已・木香・馬兜鈴

1,2ヶ月前にアリストロキア酸の副作用問題のさいに“治病求本ホームページ”のブログでも触れましたが、防已や木香の種類は日本と中国での基原生薬の違いなどがあり、かなりややこしいのでこちらに整理したものを書いておきます。


防已について
ツヅラフジ科アオツヅラフジ 日本産の木防已 ・・・ 日本で言う木防已
薬性:寒瀉 燥 降散
臓象:肝木、心火、脾土
帰経:膀胱
別名:木已、木防、青藤根

ツヅラフジ科オオツヅラフジ 日本産の漢防已 ・・・日本で言う防已
中国名 清風藤
     薬性:寒瀉 燥
 臓象:腎水
 帰経:膀胱
 別名:防已、漢已

ウマノスズクサ科アリストロチア 木防已 広防已・・・ 中国でのみ使用
日本では唐防已 輸入名 漢防已
薬性:寒瀉燥降散
臓象:腎水
帰経:膀胱、肺

ツヅラフジ科シマハスノカズラ 漢防已(粉防已・土防已・防已・青藤)主に中国で使用
テトランドラ 
薬性:寒瀉燥降散
臓象:腎水
帰経:膀胱、肺
*シマハスノカズラが日本で漢防已として使われていたものだ。アリストロチアが一部の業者に漢防已として輸入されたために、テトランドラまでが販売、使用が禁止されてしまった。

木香について
ウマノスズクサ科ウマノスズクサ 青木香・・・ 中国
薬:寒瀉
臓象:脾土、肝木
帰経:肝、胃

キク科サウスレア        広木香・・・日本で言う木香
薬性:温補燥中散
臓象:脾土
帰経:脾、肝、肺、胃
木香、老木香、新木香、印木香。

今回の台湾での騒動は青木香が犯人だ。
日本では全く使われていないはず。

その他
ウマノスズクサ科キダチウマノスズクサ 木通         中国
アケビ科アケビ            木通         日本

ウマノスズクサ科ウスバサイシン  細辛

*馬兜鈴は青木香と同植物

2012年5月15日火曜日

天南星 てんなんしょう

テンナンショウ〔本草綱目拾遺〕
[異名]虎掌(こしょう)《神農本草経》

天南星

[基原]サトイモ科 天南星、東北天南星(ヒロハテンナンショウ)、異葉天南星(マイヅルテンナンショウ)などの塊茎。
[性味]苦 辛
[薬性]温    瀉     燥     降    散
[帰経]肺、脾、肝
[臓象]肺金
[薬効・主治]湿を燥かし痰を化す。風を去り驚を定める。腫れを消し結を散らす。

熄風止痙 中枢性のけいれん、意識障害に用いる。
燥湿化痰 半夏に似るが、半夏は脾胃の湿痰、天南星は経絡の風痰、頑痰を除く。

神農本草経には心臓の痛み、肝熱、結気、積聚、伏梁、傷筋(筋違え)、痿(手足の麻痺)、拘緩(手足がかじかむ)を主るとある。

大まかに言うと痰湿を伴う神経、関節、筋肉の麻痺・痛みに効果があると言うことか、

天南星は毒性が強く、けしておとなしい生薬ではない。
炮製して用いるので、自生しているものを採取して服用したりしないでください。

方剤例:二朮湯:半夏・生姜・朮・白朮・天南星・陳皮・茯苓・香附子・黄芩・羗活・威霊仙・甘草